348944 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

聖歌は生歌

聖歌は生歌

オルガン(楽器編)

オ ル ガ ン ( 楽 器 編 )

 前の、ページで、オルガンの簡単な歴史について書きましたが、今回は、楽器の特徴について書きたいと思います。
 一番基本的なことですが、オルガンは、鍵盤を押すと、空気溜めにたまった圧縮空気がパイプに送られてパイプを鳴らす仕組みです。といっても、ただ鍵盤を押した(弾いた)だけでは音は出ません。楽器によっても異なりますが、音を出したい種類のストップ=レギスターを、ノブの場合は引いて、タブレットの場合は押すことで、送風管が開通し、空気を送ることができるようになります。

 さて、そのストップ=レギスターには、ドイツ語・フランス語・イタリア語・英語、さまざまな言語で書かれたことばと、16’8’、4’、2’、22/3’などの数字や漢数字が書かれています。ヨーロッパ語で書かれたことばは、ストップ=レギスター音色を。数字は、音のピッチ(高さ)を表しています。
 まず、ピッチですが、8'(’はフィートと読みます)というストップ=レギスターは、その音と同じ高さの音(実音)が鳴ります。16’は1オクターヴ低い音、4’は反対に1オクターヴ高い音、2’は2オクターヴ高い音、22/3’は1オクターヴ+5度上のソ、の音が出ます。漢数字は、通常、一つのストップ=レギスターは一つの音が鳴りますが、これは、漢数字と同じ数の音が一緒に鳴るもので、複合ストップ=レギスターと呼ばれています。
 次に、音色ですが、まず、基本的な音色であり華やかな音が出るプリンチパル/ダイアペイスン族。次に、やわらかい音色フルート族、鋭い音で、倍音も強いストリング族(赤い字で表示されていることが多い)に分かれています。
 さて、実際に音を出す場合は、これら、音色ピッチを組み合わせて行くわけですが、いくつかの基本があります。それは
  1. 必ずプリンチパル/ダイアペイスン族あるいはフルート族の8’を基本に用いる
  2. 倍音列のストップを加えると、音量が強く聞こえるようになる

 ところで、オルガンには普通、二段以上の手鍵盤(マニュアル)足鍵盤(ペダル)があります。手鍵盤が二段の場合、下の鍵盤が主鍵盤(グレート/ハウプトヴェルク)、上の鍵盤が補助鍵盤(スウェル/シュヴェル)で、同じストップで弾いた場合主鍵盤のほうが音量が大きくなります。また、補助鍵盤は、カプラー/コッペルを使って、主鍵盤に下ろして弾くことができます。ただし反対はできません。さらに、本物のパイプオルガンの場合、補助鍵盤(スウェル/シュヴェル)のパイプはスウェルボックス/シュヴェルボックスという箱の中に入っていて、足でスウェルペダル/エクスプレッションペダルを操作して、スウェルボックス/シュヴェルボックスを開閉することで、強弱をつけることができます。しかし、他の鍵盤はこの操作ができません。この点は、電気式のオルガンと異なります。
 足鍵盤の最低音は手鍵盤の一番下の最低音と同じで、そこから、2オクターヴ半上のファないしソ(ト音記号の基準の)まで弾くことができます。また、手鍵盤と同じ理論で、手鍵盤の音は、すべて足鍵盤に下ろして弾くことができます。

 さて、手鍵盤が三段以上ある場合ですが、これは、ドイツ系のオルガンと、フランス系のオルガンで、少し異なります。ドイツ系のオルガンの場合は、下から二段目が主鍵盤で、その上が、第一補助鍵盤、上に行くにしたがって、第二・第三となり、一番下が、もっとも音量が少ない鍵盤(ポジティフ/リュックポジティフ)となります。フランス系のオルガンは、一番下が主鍵盤で、上に行くにしたがって第一・第二・第三補助鍵盤となります。

 オルガンは、各鍵盤ごとに、基本になるストップ=レギスターアンサンブルを構成するストップ=レギスターが配置されていますので、オルガン自体は一つの楽器ですが、また、各鍵盤が一つのアンサンブルを構成していて、鍵盤の数だけアンサンブルがあると考えることができます。
 オルガンといえば有名なJ.S.BACHの曲に、6曲の「トリオソナタ」がありますが、これは、右手と左手で、それぞれ一つの手鍵盤を弾き、さらに足鍵盤が加わるもので、高度な演奏技術が要求されますが、これなどは、まさに、各鍵盤ごとがアンサンブルを構成する典型といえます。カプラー/コッペルを使って補助鍵盤主鍵盤に、手鍵盤足鍵盤に下ろして弾くのは、下ろして弾いた鍵盤で、複数のアンサンブルを一緒に弾いていると考えることができるのです。

 『典礼聖歌』の伴奏法については、またの機会に書くことにしますが、答唱句と詩編唱は、別のアンサンブルを使うほうがよいことは言うまでもありません。

 最後に、ストップ=レギスターの組み合わせですが、これは、楽器によってもストップ=レギスターとそのピッチが異なりますし、鍵盤ごとの組み合わせも異なるので、自分がいつも弾いている楽器に慣れるしかありません。普段から、どのストップ=レギスターと、どのストップ=レギスターを組み合わせると、どんな音色になるのか、どんな音色で鳴るのかを覚えて置くようにしましょう。そうすることで、他の楽器を弾くときにも、あわてずにすむでしょう。
 次回は『典礼聖歌』の伴奏法を考えてみたいと思います。 


© Rakuten Group, Inc.